不安やストレスの軽減
運針の繰り返す動きは、まるでメトロノームのよう。手を動かし続けていくと、波立った心も、だんだん落ち着いていきます。また、やわらかい布に描いた、ぷくぷくとした糸のふくらみは、触れるだけで安心感が高まっていきます。
認知症や記憶障害の予防
手は「第二の脳」と言われ、手や指を使うことは脳を刺激することにつながります。様々な研究によって、運針を行うことは、認知症や記憶障害の予防にも良いことが実証されています。
同じ趣味の人とつながる精神的安定
例えば、ひとりで始められる「ジョギング」や「ヨガ」も、同じ趣味の人が集まって活動することで、より楽しさを感じたり、継続できたりします。ルールを持ったチームではなく、ゆるくつながる関係であることも、長続きの秘訣。「運針ちくちくセラピー」は、そんな「針友(はりとも)」の集まる場所です。
達成感で自尊心が高まる
運針は決して他人と比べるものではありません。整然とした縫い目は美しく、不揃いの縫い目は愛嬌があります。しかし、運針を続けるうちに「手つきが安定して速くなった」「昨日よりも真っすぐ同じ間隔で縫うことができた」など、これまでの自分の成長を実感するようになります。この達成感の積み重ねが自尊心を高めます。
ポジティブな思考になる
運針をしていると、指先に意識が集中し、無心の状態となります。緊張から解き放たれた時、リラックスした状態をもたらします。この時分泌される脳内物質が、ポジティブな思考へと変化させるそうです。
「針友と楽しみながらはじめる」
趣味が能力をUPさせる
『これまで手芸活動を「苦手」「時間がない」「一人ではできない」といった理由により避けてきた中高齢女性や、「手芸に興味がない」といった若年女子学生が週1回90分程度の数人のグループで、会話とともに「楽しみながら」ネット手芸を3ヶ月行うことで、視覚運動速度、注意能力、認知の変換、課題と注意の切り替え能力が向上し、活動前より後でOxy-Hb濃度長変化量が増加することが明らかとなった。』
▲「脳機能維持・向上に関わる手芸活動の重要性に関する研究」(神戸女子大学・家政学部・准教授 大森正子氏)より抜粋
名門進学校でも
毎朝5分の「運針」を採用
東京・池袋にある豊島岡女子学園中学・高等学校は、首都圏を代表する名門進学校(2019年度東大合格者は29人)。この学校では、毎朝8時15分から5分間、全校生徒が「運針」を行っています。「集中力を高め、心を鍛錬する」として、学習に取り組む姿勢にも大きな効果をあげています。